大洋ボート

眸のなかで

あなたの眸のなかで
錠前の閉じる音がした
ぼくは発見された

あなたによってぼくが発見され 次いでそれに促されて
ぼくはぼく自身を発見した と云っておこうか
衝撃だったそれは
二番目だったということもあるが
ぼくはぼく自身に興味がなかったから
ぼくという人間が
ぼくのなかで居るのか居ないのか
極めて曖昧だった
摩滅をむしろ厭わなかった
あなたに近づくことが
石鹸を泡に換えるように
自分を無化することに繋がると何処かで思っていたから
逆に云い換えてもいい
自分を無化することが たとえばあなたに近づくことだと
別に固有のあなたを欲情したのではなく

あなたのなかで
ぼくはどんな像を結んだのだろうか
汚穢にイカれた獣だったか
束の間に視認された焔の尻尾だったのか
その瞬間においては想像しなかった
後々ふりかえることはあっても
その瞬間においては想像しなかった
胸底から噴き上がってきた溶岩にうながされて
ぼくはあなたを憎もうとした
あなたのなかのぼくの像を壊滅しようとした
つまりは あなたにさらに近づこうとしたのだが
ぼくはぼく自身の憎しみの意想外なほどの
原始的などす黒さ強靭さに 今さらのようにたじろいだ
ぼくは引き下がらざるをえなかった
惹起されたその瞬間のぼくの像をも 
あなたは焼き付けたはずだ
二番目に焼き付けたはずだ

あなたの眸のなかで
錠前が開く音がした
ぼくはあなたによって発見された
スポンサーサイト
    09:39 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

雨のなかで

白い雨
白い横顔
物問いたげな眸

白い雨のなかで
ピンク色に染まっていた汗
わたしの汗 あなたの汗

傘はなくても平気
道に迷っても平気
行き止まりでも?

広場の噴水の 雨の中の優雅なパフォーマンス
裾広がりの紫のドレス
天使のドレス

おそるおそるだったか
受け入れる用意はしたためていたのか あなたは
聖書なんかポケットに忍ばせて

わたしには答えがない
ここまでやって来れてわかった
行き止まりなら

    07:00 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

夜の街

夜の街が クローゼットに見えた
狭く熱い場所
ちらりと見やった 蚊の標識を
舌打ちはしなかった

誰かを押し込もうとしたのか
身代わりにさしだそうとしたのか
誰が わたしが?

夜の街が 巨大な縞馬の胴体に見えた
降下してくる その裏側のあからさまの地図
偶然を装った必然であったろうか
目脂のなかの 目配せ

怯んで まるくなった獣の背
身代わりにさしだされる寸前だったのか
誰が わたしが?

明瞭に拒否したのでもなかった
疲れてもいはしなかった
ただトイレに行きたくなった
わたしは 誰かと入れ替わった?

    10:43 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

部屋

錠前は熔け
蜂の巣のかたちになり
やがて透明になり
閉じ込められている白い蛾
わたしの記憶の糸屑

飴は舌で転がされる
口のなかの曇天を
凧のように飄々と泳ぐだろう
冬は冴え冴えとするだろう

部屋は開け放たれた
先程まで人は居たようだが
人の匂いだけが残存する
ぬくもりと かすかに異臭がする
蝋燭は燈らない 

部屋は部屋でありつづける
秋は秋に直面しつづける
    06:28 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク