大洋ボート

 本と映画の感想文。詩作も。

入院

  明日から入院の予定。病名はまだ確定していないが、自覚症状からして4年前に患い、同じく入院を余儀なくされた肺炎だろうと思う。抗生物質を点滴で1日数回投与する治療になるだろう。まあ、死ぬことはない。再び元気を回復できるだろう。酒、煙草を少量ながら今もやっているので、その影響があるのかも。それにわたしの仕事の影響もあるのかもしれない。旋盤による金属加工で、そのさいバイトという切削刃物が鉄製品を削り落とす過程で鉄粉が肺内に吸い込まれることを防ぎきれないのだ。マスクを着用すればよかったと今さらながら悔やまれるが、わたしは呼吸が窮屈になることでマスクを毛嫌いしていた。
  詩作をもう少しつづけたいところだったが、残念。
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Genre : 日記 日記
    17:19 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

焔の部屋

焔の部屋を横目にしながら
開かれたドアの
前方の部屋の
矩形の灰色に向き合う

右腕を
人差し指と中指を
さしだしかけて
発語しようと
唇を微動しかけて
口をつぐんだ あの少女
なおそこに佇んでいて
やり残したことがあるかのように
わたしの発語を待つように
わたしの一挙手一投足を見守っていた
なおそこに佇んでいた
あの少女

残像はわたしのなかで確たるものではなく
天から槍となって急降下した断言
わたしの脳天を直撃した新世界
わたしの生誕の瞬間

少女は柔らかかった
押せばどこまでも受け入れるクッションのように
無防備で
焔のように柔らかかった
焔はわたしを嗾けた
それに託けて
勢いを充填して押し入ろうとして
ためらった かろうじて踏みとどまった
心臓の毛穴の無数から汗が噴き出した
わたしはラスコーリニコフではなかった
少女の瞳にも刻み込まれたであろう その瞬間のわたし
そして「わたし」が刻み込まれた少女に
あらためて気づいて
再びのように対峙しつづけたが……

わたしはそのとき
語るべきだったのだ少女に
逆流する滝のように
欲望が喉元を駆け上がったが
いくら覗き込んでも
手を突っ込んでも
深奥には言葉はなかった 水も砂も
過去も現在も未来もなかった
そのあっけらかんとした空白
黒々とした深奥を 後退した今も
欠損のように苦々しく凝視しなければならないのか

焔の部屋を横目に
前方の部屋の
矩形の灰色に向き合う
開かれたドアが
パタンパタンと風に揺れる

    10:45 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

上半身

追随する
下半身は動かさず その分
上半身がいっそう前のめりになる

あーあ
いやな風が吹く
昔とそっくりな自分自身を温存したところで
何になるのか

隊列のいちばん後ろに位置して
ついて行ったつもり
燕がしきりにカスタネットを鳴らし
旨いパンを喧伝しながら
先を急いで消えた
アドバルーンが狭い部屋に乱立する乱痴気騒ぎのなかにあって
その鮮やかな航跡のルビーは だが
わたし自身ではなかったが
今もなお わたしの胸郭に
唆すように ごりごりと刻印しつづける

背伸びしても
先頭の風景はつまびらかにはならなかったが
だれもが一度くらいは先頭に立たされることがある
そのさなか
先頭どころか
まわりにはだれも居ない 星も鹿も虎もいない
「宇宙の外」の暗闇の中心に陥ちた
何をやってもやらなくても手ごたえはなかった
網の向こうから覗き込む奴がいた?

追随する
わたしの知らない人が
あらたな風をまとって飛翔するという
その噂を信じてみようか
上半身だけでも 追随してみようか

    14:25 | Trackback : 0 | Comment : 2 | Top

壁をつたって流れるのは
血ではない
体から滲み出し
溢れ出した水に過ぎないが
そこここに蠢き出すものがあり
微小な翅さえ光る

戦士の首が
夜空を飛んで行った
笑いを帳消しにする別の笑い
切り裂くナイフとともに
髪毛の匂いが充満した
その空白に
羨望はごく自然に産声をあげ
想像力の欠片のお零れにあずかった

殺せやしない
死ねやしないが
追随するシンパシーが
体の半分のまた半分くらいを唆し
唆しのゴンドラに腰かけてみた
欠片はミミズとなって新月をめざした

壁をつたって流れるのは
血ではない
体から滲み出し
溢れ出した水に過ぎない
区切りの一つに過ぎないが
カメムシの拭いきれない匂い
穢れの感覚が固着化する

    10:19 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
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